都営バス技術アーカイブ

TOEI BUS TECHNICAL HISTORY

異色のパラレル式ハイブリッド

平成24年度(X代)にわずか8台のみ導入された「いすゞエルガハイブリッド」は、都営バスのフリートの中でも極めて特異な存在です。 日野製(BRCハイブリッド)が屋根上に巨大なバッテリーを搭載していたのに対し、いすゞ製は「見た目がディーゼル車とほぼ変わらない」ことを特徴としていました。

車内レイアウトの代償

屋根上に機器がない代わりに、ハイブリッドシステム一式は車内後方の運転席側に押し込まれました。 その影響で、最後部座席は2名分が完全に消失。さらに、ユニット直前の座席も幅の狭い「ハイパックシート」に変更されるなど、定員確保のための苦労が随所に見られます。

【外観の謎】消えた窓と黒い塗装
車体後部の運転席側側面には、本来あるはずの窓がありません。 そこにはシステムの通風口と点検蓋が設置されていますが、遠目から窓に見えるよう黒色でカモフラージュ塗装が施されています。

走行面では米国イートン社製のAMTを採用。発進時はエンジンをかけたままでも、クラッチを切ってモーターのトルクのみで無音に近い発進が可能です。 その独特の操作性から、現在は新宿・青戸・臨海などの委託車庫に集約されています。

東京の空を守った天然ガスの力

平成6年度(A代)から平成10年度(E代)にかけて、計93台が導入されたCNG(圧縮天然ガス)バスは、当時の「環境都市・東京」の旗印でした。 黒煙を一切出さず、NOx(窒素酸化物)を大幅に削減するその性能は、ディーゼル車が主役だった時代において革新的でした。

インフラ整備の苦闘

最大の課題は燃料の補給でした。当初は南千住のみで、東京ガスのスタンドを利用していたため「スタンドが休みの休日はバスも休み」という制約がありました。 その後、深川・臨海・北の各営業所に自前のスタンドを建設し、平成13年には都庁地下にもスタンドが誕生。これにより、新宿副都心を走るC・H01系統などでの安定運用が実現しました。

  • 黒煙排出量:ゼロ
  • NOx削減率:60~70%
  • 燃料:圧縮天然ガス
  • 主要配属:深川・臨海・北・小滝橋

液晶(LCD)表示:先進すぎた試み

平成8年2月、品川営業所のB657号車に搭載された「液晶式行き先表示器」。 これは現在のLED表示の先駆けとなるフルドット式で、丸ゴシック体を用いた美しい文字レイアウトが可能でした。

当時の技術では、消費電力が大きいLEDよりも液晶の方が低消費電力で有利と考えられていましたが、実用化の壁は「外での見えにくさ」でした。 強い日差しの下ではコントラストが低下し、視認性が著しく落ちるため、数年間の試験を経て方向幕へと戻されてしまいました。

エコツムリと「シークレットみんくる」

かつて低公害車の前面には、環境局のキャラ「エコツムリ」が貼られていました。 アイドリングストップが標準装備となった平成18年末、全車一斉に「みんくる」のステッカーへと貼り替えられ、現在のスタイルが定着しました。

【都市伝説ではない実話】シークレットみんくる
全車に貼られたみんくるステッカーには、1台だけ特別なデザインが存在します。 江東(現・北)のL108号車に貼られたそれは、夜空と星の下でみんくるがくつろぐ、まさに「シークレット」な仕様です。